2月10日Vol.161
社員インタビュー
第1話_青山航大さん(3課)

本質を見る目

5年前、世の中を震撼させた新型コロナ。これをきっかけに、自分の人生は大きく変わったかもしれません。国内ではじめて感染が確認された時、私はコールセンターの仕事についていました。都会という場所や、リモートが難しい仕事のリスクを考えると、ずっと続けていくイメージがしづらくなったのです。

体調を崩したこともあって、地元の結城に戻り、療養しながら今後のことを考えていました。ふと部屋を見渡すと、壁にはお気に入りの革ジャンが。自分の好きな世界を、仕事にできたらいいだろうな・・・。そんな想いが通じたのか、数ヶ月後、栃木レザーの仕事に出会ったのです。

まったく違う環境下に身を置きながら、自分の常識がちょっと違うところにある、と思うように。それまでの自分の見方は、物を見る角度であって、奥行きまでは見ていなかった。もう少し立体的に物を見ないといけない、そう気づかされました。

前職では、電話口のお客さんの後ろにある機械を想像して会話をしていましたが、それは限定的な世界。ここは、自分の手元にくるまでに、皮から革へのストーリーがあり、そこに自分の手を加えさらにストーリーをつなげていく。革の世界を知ることで、表面的なことから、奥深さを見るよう意識が変わっていったのです。

2月11日Vol.162
社員インタビュー
第2話_青山航大さん(3課)

革と機械

栃木レザーに仕事が決まった時の浮き立つ思い、そんな記憶が蘇ります。工場独特の匂いや、見たこともない機械が当たり前に動いているのを見た時、不安な気持を持ちながらもこの建屋の中がどんな風に動いているのか、それを知りたい気持ちが強くありました。

自分の持ち場は3課で、革を伸ばし、床面を削るのが仕事。特に削る作業には神経を注ぎます。鋭い刃のロールを持つ機械は、常時、高速に回転している砥石で刃を研ぎ、そのロールに革を入れていく。革の性質上、真ん中に寄ってしまう傾向があるんです。形も大きさも全然違うので、入れ方一つで寄ったり、重なったり。綺麗な状態で入っていくようコントロールするのが私の役目ですが、革は自分の肩幅よりもずっと広く、染色する前に水分があると、なかなか言うことを聞いてくれません。

4年目に入り、癖のある革とうまく付き合えるようになりましたが、もっと品質の高いものをつくり、利益につなげることが私の目指すところです。そのためにも、深いにところに目を向けなければ。そのためには、機械と自分の同調です。

大場さんと渡辺さんに機械を修理をしてもらう時は、時間の許す限りバラしているところを見てどんな構造になっているのか学ばさせてもらっています。機械の奥深いところを丁寧に教えてくれます。革と同じように機械の性質や癖も知っておかないとちゃんと扱えません。作業優先の毎日ですが、そこは特に時間を掛けたいんです。

革を扱う人間の考え方と、機械を見る人間の考え方の両方を知り、自分のスタイルをつくっていきたいですね。それぞれが良いコンディションで扱えれば、より良いものができるはずです。

2月12日Vol.163
社員インタビュー
第3話_青山航大さん(3課)

バックグラウンドストーリー

私は子どもの頃からものが好きで、興味を持つとひたすら集め出すんです。高校の時にのめり込んだ革ジャンにはじまり、気がつけば種々雑多なものたちが自分の暮らしに溶け込んでいました。それが、自分の人生を豊かにしてくれているように思います。

名前のあるモノはネットで検索したり、容易に調べられる時代。心に引っ掛かるものを見つけては調べる。そうしたものに詳しい専門家の話を聞いたり、専門店に出掛けて行っては、詳しい店員さんと話をするんです。

ものを愛する人の話し方や声のトーン、表情、その情熱を感じながら、歴史を知り、理解を深めていく。そういう時間がたまらなく好きですね。自分の興味に従いながら収集していくなかで色々な出会いもあり、そんな一期一会を大切にしています。

そう、冒頭の革ジャンですが、デザインには理由があるんです。どういう地域で使われるかによって、その地域環境に適応するためのデザインが施されていて。機能がデザインそのもの。そんなことを考えながら集めて、実際に着用する。最高ですね。

ちなみに、ポンと置いて立つのは馬革の1枚仕立て。その硬い状態からあれこれ手をかけて、体になじませていくんです。馬革にしても羊革にしても自分の着方で皺の入りが変わってくる。好きなものの話になると止まりません(笑)。

2月13日Vol.164
社員インタビュー
第4話_青山航大さん(3課)

リスペクト

これまでお話してきたように、私は一つのことをより深く知りたいという気持ちが強すぎるのかもしれません。その分、自分の考え方と乖離がある場面に遭遇すると、正直、凹むこともあります。

大人数の中で自分の気持ちを伝えるのは苦手なので、いい仕事をするためにも、一緒に仕事をするお相手との意見のすり合わせは大切にしたいですね。それがわかり合えればいい方向に向かえるはず。そのためにも、自分はどうしたいのか、どう考えるのか、という軸を持っていたいですね。

例えば上司から、考え方や動き方を学ぶわけですが、そこにはある一定の理解というか、リスペクト(尊敬)が伴わないと、技術の継承というのは難しいと思うんです。

私は入社当時に指導していただいた上司の動き、考え方がすごくしっくりきていました。だから、退職された今もその方の教えを実践していますが、それは必ずしも他の人にとってもリスペクトされるものとは限りません。そこが、技術継承の壁というか、難しい部分ではないでしょうか。

この先、自分が教えていく立場になった時、いかにその人たちにリスペクトしてもらえるようになるかが、勝負かなって思っています。

2月14日Vol.165
社員インタビュー
第5話_青山航大さん(3課)

裏付け

私には、入社当時から大切にしているものがあります。それは、入社初日に言われた「革は1枚1枚違うんだよ」という言葉です。

その本質がどこまで伝承されているのかが、今、気になっているのです。栃木レザーの各工程には、品質を保つための考え方みたいなものがあると思うんです。それが理解されていれば、本質の伝承は難しくはないのでしょうが、実際、その裏付けはあまり伝えられていないように感じるのです。

そうすると、社長が言っていた「自分ルール」に陥り、作業中に大事なことを省いたり、 違うことを足したりして、品質のブレにつながってしまいます。

もう少し楽にこの作業を終わらせられないだろうか、もう少し簡単に品質を保てないだろ うか、と考えるのが人間です。合理性を追求すると、一件、無駄と思われる工程は忘れられてしまう。だからこそ、各工程で行う作業にどんな意味があるのかを皆が理解すれば、脈々と受け継がれていくのではないのでしょうか。

ギャップ

社会が成熟していくにつれ、デジタル化が進んで、同じようなものが多くなりがちです。例えば、落ち葉ってよく見てみると、一枚一枚の葉脈とか全てが違う。でも、その違いが見逃されてしまうんですよね。現代のなかで、この伝統的な仕事を形にするには、落ち葉のように1枚1枚違うんだよ、というのを分かってもらうことから始めないといけないかもしれません。

私たちが生きている世界は、みんな同じじゃないといけない、という風潮が強いですから、人が元来持っている自然な感覚は、必ずしも生きていくために必要なものではなくなりつつあります。そうすると10年、20年先、その環境で教育された人たちが栃木レザーに入って来た時、この仕事の価値をどう伝えていけばいいのでしょうか・・・。

ここで一生懸命伝統的なことをやっている我々も、家へ帰ると真逆の生活がある。そのギャップを、自分たちなりに埋めているわけですが、このギャップが大きければ大きいほど、どうしていいのか分からなくなってしまう現実もあります。

だからこそ、「革は1枚1枚違う」と言う言葉を胸に、連綿と築き上げてきたこの価値を未来へ繋げたい、そう思っています。