4月10日Vol.067:配信
連載:社員インタビュー
第1話_山本若奈さん(3課)

私の生きる道

「職人って、カッコいい」
そんなあこがれを抱いたのは、子どもの頃から。神社仏閣を回ったり、刀に興味を持ち、絵を描くのも好き。とにかく、日本の伝統に惹かれ、漆工芸に携わる仕事をするのが夢だった。
 
一度は製造業の仕事に就いたけれど、職人をあきらめられずに悶々とする毎日。そんな時、栃木レザーの「募集」の文字が飛び込んできた。地元だから近くだし革も好き。思い切って職人の門を叩いたのは、昨年の夏頃。

はじめて見た工場は、全然知らない、見たこともない世界で、鳥肌がたちそうになった。私が夢見ていた世界が、目の前にある!
 
本当は、革の商品をつくっている会社だと思っていた。よくわからないまま面接させてもらい、工場を見てから「えっ?商品づくりじゃないの!こんなに辛そうな仕事なの!」と、後から内容を知ったのが正直なところ。
 
でも私の心は、この見たこともないものづくりの世界に、すぐに引き込まれた。工場を見てワクワク感しかなかった。驚いたのは、4人の女性先輩の仕事ぶり。男の人となんら変わらない作業を、普通にこなしている。なんて、すごいんだろう。
 
あんな大きな革を、一人で持ち上げ、ひっくり返したり、機械に入れたり。
そのふるまいが、カッコいい!

4月11日Vol.068:配信
連載:社員インタビュー
第2話_山本若奈さん(3課)

原点は母親

私は今、3課で紐付けと吊りの仕事をやらせてもらっている。革の端を紐付けして棒にくくり吊る。ちょっと前までは紐付けがメインで、今は吊る仕事をやれるようになった。
 
先輩は最低100枚、多い時は200枚吊ることもある。私はまだまだ、数は少ない。それでも最初は、腕があがらなくなってしまって。一日中吊りの仕事をできるようになるためにも、無駄な動きがないよう、疲れない体の使い方を探らなくては。とにかく、たくさん食べて、たくさん寝る!これが最大の秘訣かな。
 
栃木レザーは、包丁も自分で研いだりと、驚くほど原始的なことが多い。「これ、人がやるの!」と信じられなかったけど、先輩たちが普通にやっているのを見て、自分もできるようになりたいと思った。ロボットがコーヒーを運んでくるような時代だけど、ここはすべて、人がやる。その考え方が、すごくカッコいい。
 
私にとって「カッコいい」の原点は、母親の姿。鉄工所で働いた母親の仕事を見ながら、機械がやればすぐにできることを、人の眼でしっかり見て、不具合を見つけて、一つひとつ丁寧にものづくりをする。そんな母親が誇りだった。
 
その姿を見てきたから、自分も職人の道に進んだのかな・・・きっと、そうだと思う。

4月12日Vol.069:配信
連載:社員インタビュー
第3話_山本若奈さん(3課)

先輩の一言

「常に先を見て、仕事をすること」
先輩から言われたこの一言で、仕事に対する考え方が一変した。いつもやっているのは力仕事なのに、そんな繊細なことを考えながらやるんだと、意外だった。
 
「毎日同じ繰り返し」なんて思いながら仕事をしていると、まるで心の中を見透かされているかのように、「本当にこれで大丈夫?」と言われてしまう。毎日、決まった作業だけど、ちゃんと考えながら仕事をしなくてはいけない。
 
先を見て仕事をするって、どういうこと??最初はわからなかったけど、少しずつ見えてきた。
 
例えば、紐は、次の工程の人が紐をほどく作業を想像して付ける・・・
革を重ねる時、紐が間に入ってしまうと革に跡がついてしまい、次の人が大変・・・
染色後の濡れている革に触りすぎても、跡がつくから気をつける・・・
 
自分のやるべきことは、目先の仕事を優先するのではなく、一つ先で作業する人のことを一番に考えることなんだ。
 
それがわかると、自分のやるべき仕事が見えてくる。力だけではなく、人のこともリスペクトするこの世界、やっぱりカッコいい。

4月16日Vol.070:配信
連載:社員インタビュー
第4話_山本若奈さん(3課)

革が教えてくれる

革は正直だ。私の仕事の未熟さがそのまま映し出される。革を乾かすために吊る仕事は重労働だけど、大事なのは力だけではなかった。まっすぐ吊らないと、革がきれいに乾かない。おしりのほうに水分が残ったり、ひねって乾いたりする。
 
革の形でそのまま乾くようにするには、紐付けが重要だった。しばりすぎると斜めになったりと、紐の縛り方一つで革の仕上がりの精度が変わってくる。
 
私の作業場である熱間室では、狭い間隔で革を吊っていく。最後のほうは落とさないようにとドキドキ。最近、ようやくできるようになった。手を固定して、隙間を見て吊る。少し水分が抜けた革は、表情が少し変わる。
 
吊った革がきれいに並んだ時は、心の中でガッツポーズ!。最初は、紐のつけ直しなどで大変だったけど、工場長から「誰もが真似できないくらいまっすぐ吊れるようになるのはすごいこと。ただ紐をつけるだけど思う紐付けも、革のことを考えながらやる仕事だから、そういうスペシャリストを目指すのもいいんじゃない」とアドバイスをもらった。
 
全部、できるようになりたいけど、一つのことを極めるのも大切なこと。技術、丁寧さ、センスもすべて突き抜けなければ、そうはならない。
 
そんな職人も、めっちゃカッコいい!

4月17日Vol.071:配信
連載:社員インタビュー
第5話_山本若奈さん(3課)

弱音なんか吐いていられない

入社して半年が経ったけど、仕事の精度は安定していない。きれいに吊れる日もあれば、ばらつく日もある。まだまだ半人前・・・
 
この仕事を40年以上やった大先輩に、「女の人には吊りの仕事は無理だよ。いいんだよやらなくて、大丈夫だよ 」と言われたことがあった。「いやだっ」と心の中で反発した。その方は最近、嘱託期間満了で辞められたけど、仕事をよく理解しているからこそだった。
 
でも、基本の仕事が紐つけと吊りなのに、これができなかったら、自分の存在意味がない。他の仕事も任せてもらえない。女性だからできないということを言い訳にできない。それをわかって入ったのだから。
 
だって、栃木レザーには10年選手の女性が、夏も冬も頑張っている。自分だけ、弱音なんか吐いていられない。色んなことを乗り越えても、この道で一人前にならないと。
 
最近、新入社員も入って来て、先輩という立場になった。「全然、できないよ・・・自分。このままでいいのか」と焦りも出てきた。そんな時、「手ぶらで歩くな。今、自分がするべきことを考えながら行動しろ」と先輩から教えられた。
 
そうか・・・自分はまだ、目先しか見えていない。先のこと、周りのことが考えられないから、新入社員のままなのかもしれない。
 
先輩の教え、ありがたい。

4月18日Vol.072:配信
連載:社員インタビュー
第6話_山本若奈さん(3課)

知りたいこと

久しぶりに会った友人に、職人の仕事をしていると伝えると、「えっ、すごい。どういう仕事か教えて!」と前のめりで聞かれた。そんな友人に伝統が守られてきたこと、あまり人に知られていない世界であることを話しながら、あらためてこの仕事に誇りを持てた。
 
「当たり前のことを、当たり前にやる。人がやっていることを「すごい」と思うのではなく、自分もできて当たり前と思うようにやりなさい」
 
いつも先輩の北條さんに言われている言葉。革をきれいに吊れた日も、「今日はがんばった」ではなく「できて当たり前」と思いながらコツコツやっていると、身体も気持も仕事についていけるようになるよ、と。
 
確かに、そうだ。私は「今日は良かった」「今日は駄目だった」といつも自己評価をするから、仕事に気持がついていかなくなる時がある。特別なんだけど、特別だと思わない。だから、誰も知らない伝統の世界が続いているのかな。  
昨年の秋、社内報「だから、Mimosa」がいきなり始まって、今はその存在が当たり前になりつつある。職人気質で寡黙な人が多いイメージだったけど、記事を読むと新商品開発プロジェクトではこれまでにないサンプルが生まれたり、先輩たちの人となりが見えてとても面白い。
 
入社して半年。まだ、話しをしたことのない人がたくさんいる。他の課の仕事も何も知らない。ものづくりのこと、栃木レザーの歴史、どんな人たちが、どんな想いで伝統をつないできたのか、知りたいことはたくさんある。先輩が引き継いでいるものもそれぞれ違うようにも感じる。何が昔からの教えなのか、そこが知りたい。
 
まずは、先輩方がやっている仕事を、当たり前にできるようになること。そして、他の人にもちゃんとつなげ、栃木レザーに貢献できるようになりたい。
 
それが、今の自分の夢。