
11月28日Vol.019:配信
連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第1話_朝倉 卓弥さん(第3課)

匂いの記憶
人間の嗅覚は不思議である。匂いが妙に昔の記憶とつながるのは良くあること。栃木レザーの近くで生まれ育った自分は、工場の前を通った時の、あの匂いを思い出す。正直、あまりいい印象は持っていなかった。
この仕事は自分の手で感じ、体に覚えさせなければ、革を扱うのはなかなか難しい。皮が革になっても生きてるから。匂いだけでなく、革を見ること、感じること、作業工程のなかで聞こえる音など、革を通して、五感が刺激される。
この世界に入って10年が過ぎた今、そんなことを感じるようになった。
革の仕事は、間口も広いが奥行きも深い。やろうと思えば、経験も資格も不要。誰でも入ってこられる世界。だけど、極めるのは簡単ではない。
以前は派遣会社で日雇い仕事をやっていた。自分は就職の氷河期世代で、仕事がなく、就職するタイミングを逃していた。
そのまま、6年。
「いつまでも、定職に就かないわけにはいかない」
フリーでいることを諦めた時、栃木レザーと縁がつながった。
初めて工場内に足を踏み入れ、「昔は、もっと強烈な匂いだった」と子どもの頃の記憶が蘇った。革にも興味があった。キツいと聞いていたけど、なんといっても自宅から近い、これが入社の決めてかな(笑)。

11月29日Vol.020:配信
連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第2話_朝倉 卓弥さん(第3課)

過酷ななかでの集中力
自分が入った当時、栃木レザーはどん底から抜け出し、軌道に乗り出した頃だった。ボーナスも出るようになっていて、「いいときに入ったな」と、以前の先輩からよく揶揄された(笑)。
最初に配属されたのは、新入社員が必ず通る熱乾燥室。染色された革に一度セッターをかけて、そこから瞬時に乾燥させる。ヒーターをかけるから、室温は50度。うだるような暑さのなかでの作業はさすがにきつかった。
今の熱乾室はちゃんと改善されているけど、自分がやっていた頃は、掘っ立て小屋のようなつくりで、換気ができないから熱がこもる。新しい人が入らないと違う場所へ異動できず、結局、6年間やり続けた。
革にひもを通して棒で吊る。ヒーターをつけて高温になった頃、次の革がやってくる。その2回目の吊る作業が大変。それでも辛いのは最初の2,3年で、その後は、身体がその環境に適応しようと慣れてくる。過酷ななか、集中して仕事をこなす技も身につけた。
色々な経験をさせてもらい、去年からポータブルセッターの仕事に。自分で希望した。何故かと言うと、道具と手をつかっての仕事ぶりに、職人的な魅力を強く感じたから。
セッターをかけた革を手作業で味とりして、ハンドセッターで伸ばしていく。3回やる。この道ベテランの木嶋さんと二人でやっていたけど今は一人。寂しいけど、一人で黙々とやるのも嫌いじゃない。

11月30日Vol.021:配信
連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第3話_朝倉 卓弥さん(第3課)

手で獲得する人生
世の中は、ロボットが料理を運んでくる時代だけど、うちは伝統的なことを大切にしている。自動化という考え方もあるけど、栃木レザーは、人の手をかける付加価値を大事にしている会社だから、このやり方はずっと続くんじゃないかな。自分は、そう思っている。
伝統って、何だろう。
熱乾室にいたころ、ネット貼りという特殊な工程の作業を兼務していた。クリップで革を引っ張って、ネット上にかけていく。シェービングという工程があって、早乙女さんから教わった。革の裏面の肉面をけずって、一定の厚さになるようミリを整える。
みんな昔の人の知恵であり、道具を使いながらの手作業。特殊なものだから、人間の手仕事でなければ仕上がらない。それを受け継ぎ、純粋に守っているだけ。
毎日、たくさんの革の量を次々とこなしていくなかで、特に愛着を持っている革がある。それは、STBという革。北海道のお客様でいたがきさんに向けてつくっているもの。何故、その革に愛着を感じているかといえば、携わる工程が多いから。特別な工程で、たくさんの手がかかっている。
染色して、しぼりをかけて、それからシェービング。それで、また、染色に持って来て色を染めて、ポータブルで伸ばす。STBが自分たちの手を離れた後、どうなっているのか・・・。いつも、気になる。

12月5日Vol.023:配信
連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第4話_朝倉 卓弥さん(第3課)

受け継がれる革に
うちの革が好きで、何年も使い続けてくれる人がいるとすれば、そんな嬉しいことはない。
ここから出荷された後、自分たちが手間暇掛けて加工した革が、どんな形になり、どうやって使われているのか、見たいし、知りたい。いつも、そんなことを思っている。
本物の革って、何年でも長持ちする。大事に使えば、一生もの。リメイクだってできる。最近では、安価で良質に見えるものが人気を集めているけど、そのおかげで、栃木レザーの本物が生きてくるんじゃないのかな。
レザータッチのものとは、金額も違うから、愛着も違うはず。自分がそう、思い込んでいるだけ?たまに、この先、仕事なくなっちゃうのかな、と不安になることもある。
革を長く使って欲しい。 つくり手はそんな想いを持っている。財布とか、バックとかを、機能とか、道具としてではなく、経年変化による革の表情を味わいながら、長く使い続けてほしい。
例えば・・・
お金をためて、本物の革を蒔いた椅子を子どもにプレゼントする。その椅子が時代を巡り巡って、子どもが親になり、またその子どもに受け継がれていく。
人と革、そんな付き合い方をしてもらえたら、ありがたい。

12月6日Vol.024:配信
連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第5話_朝倉 卓弥さん(第3課)

ワイルドなヤツを身にまとう
革好きの自分が大事にしているものは、財布とベルト。5年ほど前、自分でベルトをつくってみた。色は当然、生成。Naturalレザーこそ、自分にとってはワイルドなやつ。
世の中では、メタルっぽい金物と黒い革の組み合わせが、ワイルドなイメージかもしれないけれど、それはちょっと違う。
生成は使っていうちに、汚れも、傷も、めっちゃ目立つ。それをいかに大事にして、普段使いするか。天然素材のナチュラルレザーの独特な風合いと大自然の野性的な感じ、このワイルドさが面白い。
動物から採れた天然の皮革は、どれもが一点もの。ひとつとして同じものはない。革の質感や色合い、手触りも、使い方によって風合いも変わる。だから自分は、手を加えず、そのままで使い続けたい。
そんな個性を魅力ととらえると、革とつきあうのも味なものだったりする。
栃木レザーの鞣し工程は、20にもおよぶ。自分が経験してきた工程は、まだほんの一部。この先は、仕上げに近い工程も携わってみたい。作り手として、もっと、もっと革の良さを深く知り、それを使い手に伝えていきたい。

12月7日Vol.025:配信
連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第6話_朝倉 卓弥さん(第3課)

すべてを、使いきる
工場の片隅に積み上げられている端材の革。いつの間にか、随分と溜まってしまっている。例えば、半切革の足部分をカットしたベリーという革。シェービングで削ったあとに出るものも革の一部。
革をつくる工程のなかで、どうしても排出されてしまう部分が出るのは、仕方がないけど・・・お金かけて、破棄されている。
それらをあますことなく、活かすことはできないだろうか。
まったく視点をかえれば、使えるようになるかもしれない。ただ、漠然とそう思うだけで、具体的なアイデアまではないけれど、最近、そんなことを考えるようになった。
SDGsの流れが加速している今だから、排出される端材の量を減らすためにも、端材に第二の命を!端材だって、革。欲しい人、きっといるはずだ。
これまでずっと、革とともに生きてきた栃木レザーだから、これからは、革をあますことなく使い切ること。
自分たちの世代が、やれることなのかも知れない。