
10月7日Vol.121:配信
連載:社員インタビュー
第1話_目黒和広さん(3課)

最後は自分の判断
栃木レザーに来て、ちょうど10年。革マニアでもなかったけど、革づくりという未知の世界の面白さに惹かれ、軽い気持で入った。
今、革の表面を削るバフがメインの仕事。豚の革の両面を削って靴用の中底をつくったり、nogakeで使用されるジーンズという革の裏を削ったり。使い手のオーダーに応じて革の厚みを調整する。
最近では、革の吟面を削ってそこにワックスを塗るとか、オリジナル商品の開発に力を入れている流れで、漉くのもこれまでと違った方法を模索している。「難しいのがきたな」なんて思いながら。
厚みの調整はまさに手の感覚。言うまでもなく、栃木レザーの工程は感覚でつくられている。摩擦が強くても弱くてもだめ。その手加減に苦労してきた。
でも自分は考えることが好き。「こうしたらどうだろう」「こんな考えもあるな」「こうやったら早くできる」といったアイディアから改善まで、次々と浮かんでくる。それをまわりの仲間に話して、実践してもらえると満足したりして(笑)。
革は一つひとつが全部違うから、作業していても正解がない。栃木レザーとして出せるものに、どこまで近づけるかをやり続けている感じ。手作業だから、完璧といえるものは絶対にない。だから、これなら栃木レザーの品質レベルと見極める眼が必要になる。その眼を持てれば、どこで着地させるか、最後は自分の判断。
もともと電気系の高校を出て、基板作りの仕事をしていた。白黒をつける、答えのある世界から、真逆の世界へ。10年経って、今、その面白さを味わっている。

10月8日Vol.122:配信
連載:社員インタビュー
第2話_目黒和広さん(3課)

今、難しいと感じているのは、後輩にものづくりの「感覚」をどう伝えるか。明確に表現できないし、数字にも置き換えられない。手順はマニュアル化できるけど、見えないことをどう、伝承していけばいいのかに悩んでいる。
「見る」ものは同じでも、「どのように見えているか」「見て何を感じるか」は人それぞれ。同じ温度でもその人の状況によって寒く感じたり暖かく感じたりするのと同じ。だから、教えるというより、その感覚の差を縮めるのが、自分のやるべきことかな。
前任者が辞めてしまった後に入った自分は、誰かに教わったという経験を持っていない。元々生きてきた証として、生き物の傷は厚みも違ってくる。だから、そうしたもの一つひとつにどう向きあったら栃木レザー品質に近づけるか・・・自分の中でその感覚を確立してしまった。伝える力の弱さをあらためて感じている。
思い出すのは、最初の頃、豚の吟面と床面の区別が全然つかなかったこと。今、削った後にぱっと見て瞬間的にわかる。全く違うものに見えるのに、なんであの頃はわからなかったのか不思議。数をこなしていけば見方がかわってくる。
経験が、見える世界をかえるんだな、と。

10月9日Vol.123:配信
連載:社員インタビュー
第3話_目黒和広さん(3課)

新しい商品開発が進んでいるなかで、自分も新しいものを考えることに面白さを感じている。プロジェクトメンバーに「こんなのどう?」って密かに考えているアイデアを伝えたり。
アイデア出すなら、自分が参加してやれって話しだけど、自分には譲れないものがある。それは、仕事の後の時間。残業しない権利を主張したいわけではなく、自分の生活ルーティンがあって、今はそれを大切にしたい。日中はしっかり仕事をして、その後のプライベートは趣味に費やす。それが自分のリズム。
その趣味も幅広い。空いている雰囲気が好きで、金曜日の夜はレイトショーに通い続け、宇都宮のインターパークの映画館に入り浸っていたこともある。平日はボードゲームにはまり、戦国時代の歴史も好きで休みの日は城を見に行く。映画も歴史もボードゲームも、ストーリーがあってそこから頭の中であれこれ考えるのが好き。「なんでこうなったのだろう」と推測したり、「こうだったらどうなのか」と他の展開を考えてみたり。
一つの分野を深く掘り下げて追求するのではなく、浅く広く様々なことに触れて、シナジー効果を生むようなことを考えるのが面白い。これとこれとこれを組み合わせるとこうなる、といったこと。仕事とプライベートを切り替えて、脳にオンオフのメリハリをつけることで、目黒らしさというか、個性を生み出したい。

10月10日Vol.124:配信
連載:社員インタビュー
第4話_目黒和広さん(3課)

以前、こんなアイデアを考えたことがある。4階にカットクロコという商品が吊られていて、クロコダイルのワニ革の傷が施されているのが斬新だった。それで思いついたのが「幻想革シリーズ」。
例えばドラゴンとか、実際には存在しない生き物の皮膚の鱗とか特徴的な模様を付けた革をつくったら、これまでと違う発想で商品化できるんじゃないかと。さらに、魚シリーズも。鱗の模様を革に再現して、そこに銀の染色をする。使っていく過程での色落ちでリアル感を楽しむといったもの。
栃木レザーの原皮は、主に牛と豚。そのアイデアは熊とか他の皮をつかうことを考えたけど、排水処理が難しいようだった。バクテリアで排水を綺麗にしているところに、牛と豚以外の油が流れるとそれに合わせた分解を考えなくてはいけないと。それに採算度外視のアイデアだったから、あえなく企画倒れ。いまでも、なかなかいいアイディアだと思うんだけど、笑。
この企画は、革の存在を別の角度から見たもの。普通、革のものといえば、財布、鞄、靴。うちの革は大事に扱えば一生ものだから、買い換え需要はあまりない。そこで、例えばドラゴンをイメージしたカットドラゴンをつくって、中日ドラゴンズとコラボするとか(笑)。そういった限定的なコラボ商品で革を楽しんでもらうという、これまでのファッション分野の商品ではない別の発想。そんな商品、真剣に考えたな・・・。

10月11日Vol.125:配信
連載:社員インタビュー
第5話_目黒和広さん(3課)

自分は、よく例え話をする。仕事の仕方でいうと筒型と袋型。筒型とは、筒の上から処理していくタイプで、「これを優先にお願い」と順番が逆になると筒の中からそれを取り出すのは難しい。さらに筒は下から抜けていってしまう。袋型の人は一つひとつの仕事が袋の中に入っているから、今やるべきことを自分で整理して取りだせる。
こうしたタイプって、簡単に変えられるものではないから、その人に合ったやり方を提案してあげたらいい。そうすれば、お互いストレスも溜まらないし、摩擦も少なくて済むのではないかな。
昔、自分にはある経験があった。それは知り合いが鬱になってしまった時。心にストレスを抱えていたから、自分もその悩みに入り込んでしまい、なんとか力になりたいと思った。そんな時、その人の状態を家に例えて話をした。
家はその人の心で、ストレスは柱を徐々に食い荒らすシロアリ。被害に気づいた時はもう手の施しようがない。床や壁を剥がしてみないと発見できないシロアリは、容赦なく土台をボロボロにしていくんだと。でも、友人にはなかなか響かなかった。
ストレスをゴミ屋敷に例えたこともあった。ゴミがストレスで、家の中にどんどんゴミ溜まると害虫も増える。家に人を呼べなくなり、見てほしくないから、心を閉ざし、最後は引こもりに。そうならないためには、ゴミが溜まる前に掃除をすることだよ、と。その人に分かりやすく伝えたいという想いから、例え話をよく使うようになった。
色んなことがあった10年だけど、自分の基本は効率良く仕事をすること。相手を理解し伝え方を考えるコミュニケーションもそうしたところから派生しているのかも。スムーズに進めるための道筋を考え、より少ない時間で成果を上げる、そこを目指していきたい。
