2月20日Vol.049:配信

連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第1話_玉田寛明さん(第4課 主任)

ひとつとして同じ革はない

染色という仕事は、奥が深い。
ときには、革の状態の些細な違いに左右されることもある。微妙な変化の見極めには、経験と感性が影響する。

同じ種類の革でも、牛の形、大きさ、肌の色、ひとつとして同じ革はない。そこに、同じように調合した薬品を、同じ量で吹き付けても、それぞれの革の状態がほんの少し違うだけで、仕上がりは変わってしまう。

だから、革の状態の微妙な違いの見極めから、染色の仕事は始まる。

そして、いろんな色を組み合わせながら、指定の色をつくり、吹き付けていく。ベースに入れる色は同じでも、牛の形によって割合は変わる。吹きつけも、色の出方がほんの少しでも違えば、革の印象が変わってしまう。

染色は、すべての作業の見極めが難しく、ものすごく神経を使う工程だ。最後は自分の感覚を信じるしかなく、常に不安と隣り合わせ。

感性とか、感覚は、すぐに花が開くことはないけれど、日々の経験の積み重ねで、必ず磨かれていく。だから、面白い。

2月21日Vol.050:配信

連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第2話_玉田寛明さん(第4課 主任)

ドキドキハラハラの調合体験

13年前、転職先を探しているなかで、栃木レザーの塗装職募集の文字が目に飛び込んできた。革の染色なんて、なかなか経験できない世界。「やってみたい」と、気持が動いた。

革に興味のある人が多いなかで、自分は栃木レザーという名前すら知らなかった。もちろん、革に興味を持っていたわけででもない。それでも、自分の生まれた土地の会社で、こんな仕事が経験できるのならと、その足を踏み出した。

それまでは、家電メーカーの工場で働いていた。同じものづくりではあるけれど、プロセスも環境も何もかも違う。面接時に見れなかった工場を、初日に見せてもらい、正直、驚いたけど、やると決めたからには、なんとしてもやろうと思った。

いつ、色に触れられるかな・・・ドキドキしながら、最初は塗装の前任者について、大きな革を吊ったり重労働作業。しばらくして、「やってみるか」と、薬品を使った調合をやらせてもらえるように。しかし、上司が10数分でやってしまうところ、自分は1時間が経過しても、うまくいかない。

早くしなくちゃ、早くしなくちゃ。
気持ばかりが焦る。時間との戦いにハラハラ。焦れば焦るほど、指定の色は遠のいていく・・・

2月22日Vol.051:配信

連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第3話_玉田寛明さん(第4課 主任)

ガンを使いこなす

感覚がモノをいう染色の調合は、経験を積むしかない。入社数年後、場数を踏んで、なんとか指定の色を出せるようになった。色ができたら、次は吹き付け。これは、色をつくるよりもさらに難易度が高い。吹きつけの相棒、エアースプレーガンは微妙な調整で色が変わってしまう扱いにくい奴。均等にのせる調整は至難の業だ。

そんなガンを使いこなすコツは、液だれしないよう気を遣いながら、どこまで伸ばすか。手首の動かし方や移動の距離。その繊細な動きは、長年の経験から身についた自然な動き。だから、その技を人に伝えるのは何とも難しい。

染色で、今でも難しいと感じるのは、ムラがでやすい深い色。例えば黒色が並んだとき、深ければ深い黒ほど、美しい。栃木レザーにしかない深味のある色を出したい、そんな思いで染色に携わってきた。

13年間、満足したことはたったの一度もない。出荷した後、きれいな塗り肌を継続できているだろうか、こすりは足りなく無かっただろうか。いつもいつも、気がかり。

まるで、子どもを送り出した親のような気持が続いている。

2月27日Vol.053:配信

連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第4話_玉田寛明さん(第4課 主任)

伝え受け継ぐ責任
今、3名で塗装の仕事にあたっている。自分はそれを伝承する立場にあるが、この仕事を教える難しさは、訓練用の革がないこと。頭のなかでイメージし、一発勝負で吹き付けに挑戦してもらう。ムラが出にくい色からはじめて、その間にガンと自分の動きを身体に染み込ませる。

今の時代にあった教え方をしたいが、感覚、感性、勘を頼りにやっている以上、それを身につけるしか他に道はない。自分もそうやって、前任者の背中を見てきたが、自分なりにやってきたことが一つある。

それは、その日に出来たことに、その日の最高点をつける。そして、「うまくいった」「うまくいかなかった」だけで終わらせず、もう少しこうしたら良かったかなと絶対評価で考える。

多くの問題に向き合い、成功や失敗を積み重ねていくしかないなかで、常に自信がないから、毎日、毎日、その要因を追求し、「明日はもっとよくなるぞ」と信じながらやってきた。それは、今でも同じ。

自分はコツコツタイプ。子どもの頃から、一つのことを追求して解を見つけてきた。些細なことだけど、13年間の小さなその積み重ねが、身になっている。

2月28日Vol.054:配信

連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第5話_玉田寛明さん(第4課 主任)

今、やりたいこと
これまでつくってきた色のなかで、今でも忘れられない染色がある。それは、淡い青色。つくりながらテンションがあがったことを、昨日のことのように思い出す。

指定の色をつくるのがメインの仕事だけど、栃木レザーから、推しの色を発信できたら面白いかも。もし、自分の好きな色を出せるとしたら、間違いなく、あの時のような淡い青をつくってみたい。

何年前だったか、布に色を染みこませ、直接、革に塗り込む工法に取り組んでいた時期があった。ムラがいい感じの風合いを醸し出し、個性的な革に仕上がる。いつか、そんな違う工法にチャレンジしてみたい。

栃木レザーの染色という仕事を受け継いだ身として、これからはそれをつなげていくこと、進化させることを考えていかなければと感じている。

2人を育てていくなかで、ただ、技術や技、こだわりを教えるだけではなく、この先、どんな広がりがあるのか、その面白さも探っていきたい。

そのためには、まず薬品を知ることかな。染色の仕上がりを左右するのは、やはり薬品。それをしっかり学んだうえで、染色の可能性を広げていきたい。

2月29日Vol.055:配信

連載:社員インタビュー
(毎週火・水・木配信)
第6話_玉田寛明さん(第4課 主任)

プライドを刻みたい
このところ、会社に一体感が生まれたように感じる。「製品開発のプロジェクト」が立ち上がったり、「だから、MIMOSA」みたいな発信ツールができたり、社員参加型だからこそ、一体感につながっているのだろう。

そんななかで、一つ思っていることは、品質管理の部門があったら・・・と。ここ数年、原皮の状態が思わしくないことから、三柴工場長や各課の課長が、試行錯誤で改善に取り組まれている。すべての工程に横串を通した品質管理部門の存在があれば、今の取り組みも成果につながるのではと思う。

そして、常に気がかりなのは、革が出荷された後の先が全く見えないこと。自分たちは、直接ユーザーの声が聞ける機会がなく、つながっているわけでもないので、送り出した革たちが、どんな風に最終製品となり、どんな風にエンドユーザーである使い手に喜んでもらえているのか、わからない。

ものづくりには、つくり手としてのプライドが存在している。自分なりに納得ができ、恥ずかしくないものでありたいから、皆、努力と情熱を注ぎ込んでいる。

そんな栃木プライドを、革のどこかに刻印刻することができたら・・・。ものづくりをするものにとって、見えないユーザーとつながれることが、一番の安心感になる。