
4月7日Vol.174
社員インタビュー
第1話_逆井 強さん(製品課 課長)
優しく包み込む、ケースという相棒
今回は、製品課_逆井課長の登場。軽快でスピード感ある語りは、笑いが絶えないインタビューでした。そのなかに感じられた、彼の熱い想いと決意を、5話に渡ってお届けします。

仕上がった革を、検品して世に送り出す。それが製品課の仕事。栃木レザーとして出していいものかどうか、このチームで判断するだけに、ブランドを背負っているプレッシャーが常にある。
品質の基準は、栃木らしさ。らしさって、長年革と向きあってきてわかる感覚的なものだし、時代によって人それぞれ捉え方が違う。自分が思う栃木らしさは、革の硬さ、ハリ感、光沢かな。
うちのヌメは、何も手をかけていないのに光ってて、惚れ惚れするんだよ。「売りたくねーなー、手元においときてー」って思う見事な革に、何度か出会ってきた。
今は、その印象が少しぼやけている。技術継承とか、原皮の問題とかあるのかな。どうすれば昔のような「らしさ」が出るのか、製品課の経験しかない自分には、わからない。でも、まだポテンシャルはあるはず。
三羽ガラス
自分は三柴工場長、4課の中澤課長と同じ高校で同級生。親父がここで働いていたから、2人を栃木レザーに紹介した。自分も入る予定だったけど、親子で同じ会社に勤めるのに抵抗があって、1ヶ月遅れで入社した。
ガキの頃から、本物の革を見て育ってきた。職人気質の親父は、買い物に行くとすぐに革製品の売り場に行って、「これ、うちの革かな」なんて言ってた。革の話しもよくしてくれたよ。だから、革は自分にとって身近な存在だった。
「急ぐ」と「雑」は違う
入社してからはずっと製品課。昔、先輩によく言われた言葉がある。それは、急ぐのと雑は違う、ということ。時間内に早く終わらせることは大事だけど、雑な仕事をしたらもともこうもない。自分も追われた時は、一呼吸おく。それから丁寧に早くやる。初心忘るべからず。

4月8日Vol.175
社員インタビュー
第2話_逆井 強さん(製品課 課長)

3年ほど前だったかな。当時の上長が嘱託になって、自分に課長の話が飛び込んできたのは。あの時はずっと逃げてた。会社側に行きたくなかったんだよね。責任を背負えないし、肩書きってすごく重くて、型にはめられるイメージがあった。
ある日、社長が自分の名刺を作って辞令書を発行して、「返事は首を縦に振るしかないよ」って。その時「やらせていただきます」って決心した。
それから、自分も変われた。課長になる前、「俺だったらこうする」と思っていたことも実践した。違ったら修正すればいい。立場が変わって、ものごとを柔軟に考えられるようになった。
でも、やっぱり重い。製品課は栃木レザーの品質そのもの。だめなものを出せば、お客さんの信用を失うし、検品を厳しくすれば、売れないものが山積みになる。品質を判断するだけじゃなくて、自分の目の前にある革をどう売るかなんだよ。
新商品開発プロジェクト
その倉庫の隅で寝かせている革を活かそうというのが、新商品開発プロジェクト。面白い素材に変えられないか、もう一回生き返らせるための試行錯誤。自分はプロジェクトリーダーになり、社長と一緒にイタリアにも行かせてもらった。
帰国後、メンバーにイタリアのタンナーさんの話しをしながら議論した。次々出るアイディアに、栃木皮革時代にも同じようなものがあった。「あの時は流行らなかったけど、今なら価値あるかも」と過去の失敗を活かして考えてみたり、やりたいものづくりに挑戦したけど思うようにいかず、理想と現実のギャップに苦しんだり。
悩みながらも、いくつかの作品が生まれると、2月のイタリアでの展示会に社長が1つだけ持って行ってくれた。3課の山本さんがつくった革。イタリアから新喜皮革さんが発信したYouTubeの生配信を見ていたら社長が登場。その革の説明をした時は嬉しかったなぁ。


4月9日Vol.176
社員インタビュー
第3話_逆井 強さん(製品課 課長)

最近、セクションの壁が低くなったように感じている。ちょっと前までは現場が違うと、顔は知っているけれど話しはあまりしない、という光景があたり前だった。今、横のつながりが出来はじめているんじゃないかな。
自分は、もともと現場関係かんけいなく、会社の人間と付き合いがある。趣味が合えば、プライベートでよく遊び行ったりしているからね。自分、夏は海釣り、冬はスノーボード、家ではゲームと春夏秋冬遊べる趣味が豊富にある。会社の中でそんな話をしながら、ボードをやると聞けば、「どこの山行くの?オレはいつも新潟。行ったことないなら乗っけてってやるよ」なんて感じで。
ダイエットで始めたのはボーリング。全身を使う有酸素運動だから結構効く。1年間やって12キロ落とした。小山のゴールドレーンのプロに習おうと思ったら、レッスン料が高い!そのプロショップに通いつめるうちに顔見知りになって。商品買いながら分からないことを聞いてると、教えてくれるようになった。メタボも解消されて230ぐらいスコアを出したら満足しちゃって(笑)。
すべて手づくり
料理もやるよ。ラーメンはスープからつくる。げんこつ1本と豚の背骨と、鶏ガラを合わせて焚き上げる。ガス代節約で、車のエンジンオイル交換で購入したペール缶を再利用してロケットストーブつくって、その上で火を起こしながらスープを煮込む。つくり出してから、食べるのは次の日。
手作りのストーブは、煙が出ないように2次燃焼でもう1回燃やす。下から上がった煙が吸われながら燃えるんだけど、その炎は迫力があって美しい。網をのっけて、肉焼いてくって、酒飲んだら最高。毎週やってたら、メタボに逆戻りだよ。
料理作って、それを両親や友達、妹の家族とか呼んで振る舞った時に、うまい顔して食べてくれるのを見るのが一番いい。自分にとって趣味とは、人とのつながりを深くするものかな。


4月10日Vol.177
社員インタビュー
第4話_逆井 強さん(製品課 課長)

自分の親父は栃木レザーで部長をやっていた。10代の頃は、泣かせてなんぼだったから、随分と親不孝したよ。「18になるまでは好き勝手やらせてくれ」って宣言して。お袋の財布から随分と金を拝借したから、最初にもらった給料をそのままおふくろに渡した。クルマが好きだったから、ガソリン代1万円だけぬいてね。
お袋は今まだにその給料袋を大事に持っている。たまに酒飲んでると「これ覚えてる?」って、くしゃくしゃの茶封筒を見せられて。親ってそういうもんだね。
親が還暦をすぎてから、毎年お年玉を渡している。70になったらベースアップするよ、って言っちゃった手前、今は1人2万円。決まり事は守らないと、笑。親父もお袋もそのお年玉、1円も使わずに貯めてるよ。
殴り合い
自分が人との関わり方が独特なのは、親父の子育て論が影響しているね。親父と俺の関係も、親子というよりは友達。何か気になることがあれば、すぐ喧嘩が始まる。自分がお袋にむかついて暴言吐いてると、「人の女に何すんだ」って始まって、「表出ろ」って一発殴られて、「何すんだこの野郎」って殴り返して。
とにかく親父も熱い人。力じゃ勝てるけど、頭の中に親という文字が出てくるから本気でなぐれない。だから、パンチがあたっても全然効かない。親父も分かっているから、「お前、そんなの全然効かないよ」って挑発してくる。顔が蜂の巣みたいにボコボコになったこともあった。17の夏。
GLAYとか流行ってる時代、金もないのにブランド物の服着てるから、上半身裸で戦う。だから傷だらけ。親父はボクシングやってたから、強いんだよ。そんな父親とは今でもいろんな話しをする。自分にとっては、生涯の師匠だね。


4月10日Vol.177
社員インタビュー
第5話_逆井 強さん(製品課 課長)

昨年末、生まれて初めて骨折をした。入院先のベッドで変わり映えのない天井をずっと眺めながら、2週間も激痛に耐えた。退院後、久しぶりに工場に顔を出すと、若い2人がきっちり仕事をこなしてくれていた。
その成長ぶりが頼もしく見えた。これで、若い衆に現場を任せられる。怪我をしなかったら、気付かなかったかもしれない。まさに、怪我の功名だよ。
もう一つ。「時間がかっても、怪我をしっかり治してください」っていってくれた社長の一言。労災を申請させてもらえない会社も多いと周囲から聞くなかで、ありがたいこと。
正直、会社にしがみつかなくても、趣味の中から一つくらい仕事になるかも、って思ってた。でも、骨折してみて、はじめて当たり前の毎日に、感謝する気持を持てた。だから今は、栃木レザーに骨を埋める思いで、やってみたい。そのためにも今の時代の「らしさ」を追求しないと。
イタリアでの経験
イタリアへ行って思ったのは、同じ革しかないということ。平らなもの、シボが立っているもの、オイルが入っているものと入っていないもの。大まかに分けるとそのくらい。
それを栃木の商品に当てはめると、みんな揃っている。だから今度はその革の差別化を図るためには何をすればいいのか?
まだ答えは出ていない。それを探したい。出ないかも・・・と、終わりにしたら楽だけど、そういうものじゃない。多分この仕事って一生勉強なんだと思う。満足するゴールなんてない。
砂漠の中を歩いているような仕事だから。職人ってそんなもんじゃないかな。探求心無くしたら、そこで職人人生終わっちゃうからね。歩き続けるよ。

