5月28日配信

<予告>

「だから MIMOSA」をスタートして半年以上。
現場の人たちは、日々、何を感じ、
何を考え、何をしたいと思っているのか。
想いのカタチが少し見えてきました。

それは、みんな、栃木レザーのファンであり、
この仕事に誇りを持っているということ。
「もっと良くしたい」という
一人ひとりが明かしてくれた心の声を、
三柴工場長と井上部長はどう受け止めているのか、
じっくり語っていただきました。

そして、栃木レザーが扱う厚い革の背景や、
今の課題、挑戦したい新たな企画などにも、
話しは広がりました。

明日から数回に分けて配信する特別企画。
お二人の対談を、是非、お楽しみに。

5月29日Vol.076:配信
特別対談企画(1)
三柴康孝工場長×井上陽児部長

みんなの想いを知る


<だからMIMOSA>がスタートして、半年が過ぎた。メッセージ性の強い社員の声は、二人にどう届いているのかー

部長
MIMOSAは、社員一人ひとりのモチベーションアップや、自分以外の課の仕事への理解につながると期待していましたが、それ以上に「こんなにも会社のことを考えてくれているんだ」と毎回、心に深く響いています。辛辣なメッセージも、真剣に会社に向きあってくれているからこその発言。すごくありがたい。

工場長
業務中はどうしても仕事の話しが優先されるので、管理職と話す機会はあっても、社員とのコミュニケーションはなかなかとれないのが現状です。なので、インタビュー記事を通して、一人ひとりの想いや考えに触れながら関心させられたり、心を動かされたりしています。

うちは部署を超えた横のつながりがあまりないので、他の課の人の存在やそのセクションがどんな仕事をしているのか、社員同士もお互いを知るきっかけになるんじゃないかな。

部長
最近4課の玉田主任に、いたがき様への納期連絡などを担当して貰う事にしたのですが、インタビュー記事がきっかけでした。それは、お客様と現場の架橋的な役割を担っていた私がそこに手が回らない状況になり、基本的な納期連絡や「こんな革をやりたい」というお客様の声を工場につなげるのにタイムラグが生まれていたのです。

仕上げをよく理解している現場の人がお客様とやりとりできれば・・・と思っていたところに、「お客さんのことを知りたい」という彼のメッセージが目に飛び込んできました。声をかけ、快く承諾してくれたという経緯です。

インタビュー記事を通して、あらたな発見や多くの気づきがあった。みんなの想いをカタチにするために、自分たちも変わらなければ


工場長
ありますね。これまで女性が現場で働くのは、作業環境から考えてもなかなか難しいのではと思っていましたが、それを打ち消してくれたのは3課の山本さんのインタビュー。その背景にはあんな想いがあったんだな、とすごく心強いものを感じました。

部長
山本さんは私が面接したのですが、工場を一周見学してから、「職人になりたい」と言ってくれたことをよく覚えています。女性とか、男性とか、そういう目線ではなく、その人にとって仕事の価値を見出すことが、上に立つ人間にも必要であることを、気づかされましたね。

私は1課とコミュニケーションをとることが多いので、清水課長の経験談、雨宮さんのチームの話し、施設課の渡辺主任の機械への愛情などの話しを日頃、耳にしていました。それを、社内に発信できたことがすごく嬉しい。だから「まだ見てない」という社員に、是非、読んでほしい。

工場長
2課の小井沼課長補佐や、3課の朝倉君はどちらかといえば寡黙なタイプだけど、内に秘めたる想いはすごい。小井沼課長補佐は、先日のGWに、ショップに立って大活躍だったと聞いています(5月13日の社内めぐり配信)。サコッシュを売ったとか!職人がショップに立つというのは、うちにとって初めての挑戦ですからね。

みんなの気持が垣間見られると、この先、やりたいこと、できることがどんどん生まれてくるんじゃないかな。

5月30日Vol.077:配信
特別対談企画(2)
三柴康孝工場長×井上陽児部長

栃木レザーの原点、厚物革


栃木レザーといえば、厚物のヌメ革。社員インタビューの中でも、そのこだわりは垣間見れた。何故、厚物なのか。原点に立ち返って自分たちの強みを探ってみた。

工場長
厚くて重量のある厚物革は、栃木レザーが得意とするところで、それを扱えるのは国内でもわずか数社。厚い革を鞣すには、ピット槽などの設備、技術、そして職人がいなければできません。その全てを持ち合わせた栃木なら「ベルトの1枚もので4ミリ、5ミリもつくれるよ」といったような評判が立ち、「厚い革なら栃木レザー」というイメージが定着しました。

一昔前、タンニン鞣のファッション的需要は少なかった。ファッションはクロム、タンニンは学生カバンやソールレザー(底材)で、私が入社したあたりから、ファッション産業の需要が増え始めました。その新たな市場参入のきっかけをつくったのがハシモト産業の橋本会長です。

そして、時代の流れとともに、革のニーズも変化していきました。つまり、うちが得意とする革の自然な表情をそのまま残す素上げとは別に、その表情を逆に隠す仕上げを求められるようになっていくわけです。カラーバリエーションの勝負で、色数がすごい増えましたね。

私も仕上げをやるようになって3、4年が経ちますが、当初は「栃木は生地を活かした素上げだろ」というのが根底にあり、正直、本流と離れたところで革づくりをしているので違和感を覚える日々でした。

素上げとは、動物の生きた証がそのまま革の表情となって残りますから、一切、ごまかしがききません。革本来の風合いを感じられる仕上げ方法で、安定した品質を持つ革をつくるには、職人の目利きや経験が必要不可欠。栃木レザーが評価されるのは、その点にあります。

しかし、入って来る原皮の状態や時代の流れを考えると、今、求められている革づくりを受け入れていかないと生き残れない。そう、自分のなかで意識が変わっていきました。

部長
原皮は重量で買いますから、厚ければ厚いほど価格は高く、手に入りにくい。だからこそ、厚物を扱っているということは、我々の最大の強みでもある。他には絶対に負けないという自信を持っています。とはいうものの当然、薄くて柔らかい革も扱っていかなければなりません。

その背景に、工場長もおっしゃっていましたが、原皮の問題があります。ここ数年、入ってくる原皮の状態はあまりよくない。世界で一番、品質が安定していて、厚物を提供してくれるところから入れていますが、そもそも全体量が少ないのです。牛を育てる年数が長ければ身体は大きく、革も厚くなりますが、牛は食肉用に使われるので、長く育てるとコストがかかってしまう。なので、早い段階で屠殺されるため革の厚みもこちらの要望を満たしていないものが多いのです。そうした外部環境の変化もあります。

めまぐるしく変化する時代のなかで、
伝統を守りながら、柔軟な発想で革新的な革を創り出す。その道とは・・・


工場長
今、これまでにない色づくりにチャレンジしています。ヌメ革の印象が強い栃木レザーからすると、栃木らしさとは違う個性づくり。薄い革へも同じように試行錯誤しているところです。

部長
栃木レザーが、薄い革に挑戦するにはコストの課題があります。同じ厚みで当社と他社の革だと、クロム鞣しの他社の方が圧倒的に安いのです。栃木レザーというブランドで購入してくれるお客様もいらっしゃいますが、クロムでもいいというお客様は当然、安い方を購入されます。結局、コスト競争で負けてしまう。それを踏まえて、うちがやるべきことは、他社にできない色づくりとか、お客様の心に刺さるような開発が必要だと思うのです。

そういった努力をしながら、価格競争に巻き込まれないための付加価値を高める。薄くて安いクロム鞣しの革に対して、厚くて高いタンニン鞣しの革での勝負に挑まなければなりません。

工場長
原皮の種類によってもだいぶ、コストが違ってきます。栃木レザーが誇る設備、技術、職人が活かせる原皮を探したい。コストを削って削って底辺で戦うのではなく、これまでの栃木らしさとは違うあらたなものづくりに挑戦しながら、これまでの本流が生き続けられる方向を目指したいですね。

6月4日Vol.079:配信
特別対談企画(3)
三柴康孝工場長×井上陽児部長

つなぐ、つながる、つながれる!


職人さんたちにとって、工場から出荷されたあとの革は、とても遠い存在に感じられている。自分たちがつくったものがその後、財布やバッグに生まれ変わり、お客様に喜ばれているということを、もっと体感してもらいたい。そのためにも、現場から一歩、外に飛び出してもらいたい。

工場長
鞣す前、鞣した後、そして仕上げて出荷するときの革は、全然、表情が違うんです。生の革を扱っている人は、仕上げの革を知らないし、仕上げをやっている人は、生の革を知らない。

私も入社当初、ヌメ革までは知っているけど、色がついて仕上がった革は見たことがなかった。1課〜4課に携わるようになって、はじめて革の全体像が見えたようなものです。

ゴールデンウイーク中に数名の職人さんがショップに立つという試みがありました。私も先日、ショップで女性のお客様と話しをしたのですが、「これが好きなのよ」と熱く語ってくださるんです。

工場にいるとわかりませんが、ショップはそうしたお客様のことを感じられる場所ですよね。5月末に宇都宮のフリマにも参加しました(今週の社内めぐりで紹介予定)。そうした機会を通して最終製品に携わり、少しずつ現場とショップの距離感を縮められればいいですね。

部長
やはり、現場の人も工場だけではなく、外の人との関わりを持つことが大切です。そういう意味では、コロナで止めていた工場見学も再開し、現場の人にその案内役をやってもらおうと考えています。私たちよりも職人さんのほうが、よりリアルに伝えられますからね。

この案内役は、他の課の仕事の内容も把握しないと説明できませんから、自分の仕事以外のことにも興味を持ってもらえるかもしれませんし、横の繋がりもできるでしょうね。

「お客様とつながりたい」
これは、栃木レザーだからできること。
作り手よし、売り手よし、買い手よし。
つながることで、新たな方向が生み出される。


部長
つながりという意味では、以前からやりたいと思っていることが一つあります。それはお客様とのつながりです。栃木レザーの知名度から、商品に関するお問い合わせは、どうしてもうちにきます。これをなんとかしたい。

例えば、「こんな財布がほしいのですが」とか「ベルト加工はしてもらえますか?」といった問い合わせがきます。ショップがなかった当時は「うちは製品つくってないので」とお応えして終わっていました。折角の問い合わせも、どこにつないでいいのかわからないので、そこで切れてしまう。それなら、お店の紹介をしてつながりたい、これがきっかけです。

具体的には、財布とかバッグの販売、加工、クリーニングなど、「革関係の地図」みたいなものを栃木レザーのWebサイト上に載せるイメージです。うちに電話をしてくる前に、サイトにアクセスしてくれていると想像すると、そこで対応ができます。

工場長
それ、すごくいい話ですね。栃木レザーの大きな問題点の一つに、偽物があります。どう見ても栃木レザーではなさそうな革を、栃木レザーと偽って販売しているサイトですが、1社1社を追求していくのはなかなか難しいのが現状です。

今の井上部長のアイディアは、「栃木レザーのサイトに載っているお店は本物」という証明になる。それが広がれば、偽物サイトも消滅していく可能性が考えられますね。

部長
1年に一度は取引状況を確認するなど、掲載情報の管理をしっかりやらないといけません。手間はかかると思いますが、ハシモト産業さんのような栃木レザーの販売店にとっても、商品販売の店舗にとっても、ユーザーにとっても喜ばれると思います。

作り手よし、売り手よし、買い手よし、そんな構造ですね。

6月5日Vol.080:配信
特別対談企画(4)
三柴康孝工場長×井上陽児部長

自分たちが伝えられること


社員インタビューで皆が口にしたセクションの壁。部門ごとに品質を向上させ、専門知識を深めたことで組織は成長してきたが、これからは、部門と部門の連携で大きな価値を生みだす時代。縦のつながりの強みを残し、横をつなぐ「ヨコ串力」が、求められている。

工場長
今、工場内に必要なことは、社員同士のコミュニケーションをどう、深めるか。新商品開発プロジェクトや社内報などの新たな取り組みで、少しずつ変化はしているものの、社内報もまだ目を通していない人はいるでしょう。プロジェクト参加に気後れしている人もいるでしょう。一人でも多くの社員が、ポジティブになるために、我々が何をするべきか。

部長
前回の話しでも出ましたが、自分の仕事以外は知らないとか、ともすれば他の課の社員と言葉を交わす機会もない、という人は多いですよね。その壁を取り払うには、横串を通す必要がありますが、皆が同じ方向を見ていないと、つながらないかも知れません。

1課から4課までが上手く連携できれば、単一の部門では生み出せなかった価値をつくり出すことが期待できます。皆のベクトルを合わせるためには、同じ方向を見る機会をつくる必要があるのでは。ちょうど、3年後に90周年を迎えます。そこを旗印に全社員で何かに取り組めたらいいいですね。

例えば、昨年からスタートした新商品開発プロジェクトは、新商品として売り出すことを目指していますから、その革で記念品をつくるとか。仲間がつくった、あるいは自分がつくったものが記念品として残るのは、栃木レザーならではじゃないかな。

工場長
その機会を自己表現の場と考えて、自分で好きなものを好きにつくるというのも面白いのでは。ベリーの革1枚あればコインケースやパスケースくらいつくれますね。

自分で好きな色を染めてみたり、油を塗ってみたり、わからないことは誰かに聞けばいい。それで社員同士のコミュニケーションも生まれる。生の革しか知らない人たちにとっても、仕上げの革に触れる機会となる。

大事なのは、全員で同じ仕上げの革と向き合いながらのものづくりをすること。これこそ、部門間を超えて共通の価値観を持てる企画案ですね。

部長
最近、人材の採用で思うのですが、うちに来てくれる人たちの中には、個性的で特別な才能を持った人が多い。

目指していた道で花は開かなかったかもしれないけど、ものづくりへの想いを持ち続け、栃木レザーに何か期待感を持って来てくれるのではと感じています。そうした新たな力もかりて、大輪の花を咲かせることができたらいいですね。

工場長
新商品開発プロジェクトをやってわかったことは、未経験だからこそできるということ。私だと過去の経験上やらない、という判断をしてしまうものでも、メンバーは挑戦しようとする。

製造工程関係なく「これがつくりたい」という想い。それってすごく重要。誰もが挑戦できる環境や文化をつくり、それをサポートするのが我々の役目でもあります。

3年後は、栃木皮革の誕生から90年となる。栃木皮革とは、現在の栃木レザーの前身で、紆余曲折を経て今に辿り着いた。
歴史を振り返り、これまで支えてくれた多くの方々に感謝の気持ちを込めて、90周年を迎えたい。その時、長い間、革に携わってきた私たちだからこそ、何かを伝えることができればーー